日本の老後資金
お金はある。でも、今は使えない
FIREの計算はアメリカ生まれで、いつでも引き出せる1つの財布を前提にしています。日本では老後資金の一部がiDeCoのように年齢で縛られていて、それが計算を変えます。
そのままでは当てはまらない目安
よく知られた目安では、年間支出の25倍を貯めれば、毎年4%ずつ取り崩しても元本はなくなりません。年間支出が480万円なら1億2,000万円です。
この目安は、お金にいつでも手が届くことを前提にしています。iDeCo(個人型確定拠出年金)と会社の企業型確定拠出年金(企業型DC)は、原則として60歳まで引き出せません。加入期間によっては受け取りを始められる年齢がもっと遅くなり、自分の条件は加入先からの通知でわかります。下の計算はそれで変わりません。変わるのは年だけです。
NISAは別です。運用益や配当に税金がかからない口座ですが、中身はいつでも売って引き出せます。FIREの計算では、NISAは自由に使えるお金の側に入ります。
すぐ思いつく2つの答え
42歳、年間支出480万円、つまりFIRE目標額1億2,000万円の人を考えます。NISAを含む証券口座に3,800万円、iDeCoに950万円、企業型DCに3,400万円あります。
- 自由に使えるお金だけを数える。1億2,000万円のうち3,800万円で、32%です。慎重な答えですが、実際にある4,350万円を数えていません。
- すべてを数える。1億2,000万円のうち8,150万円で、68%です。楽観的な答えで、45歳で企業型DCを受け取れるかのように扱っています。
2つの答えの差は36ポイントです。一方は“まだ3分の1”、もう一方は“もう3分の2”と言っています。
答えの奥にある問い
どちらの答えも単純すぎます。制限はあるかないかの話ではなく、日付の話だからです。大事なのは、仕事を辞めてから制限付きのお金に手が届くまでに何年あり、自由に使えるお金でその年数を支えられるかです。
同じ例で続けます。50歳で辞めたい人は、60歳までの10年をつなぐ必要があります。480万円の10年分は4,800万円で、証券口座には3,800万円。全体の数字がどれだけ良く見えても、1,000万円足りません。58歳で辞める人なら2年分で済み、証券口座で十分に足ります。
どちらの見方にも役目があるということです。自由に使えるお金の見方は、制限が外れるまでたどり着けるかに答えます。全体の見方は、その後に足りるかに答えます。片方だけでは、問いの半分にしか答えられません。
貯蓄率の落とし穴
見落としやすい点があります。iDeCoの掛金は、自由に使えるお金を増やしません。それでも良い選択ではあります。掛金は所得控除の対象になって税金が減り、お金も運用で育ちます。ただ、50歳で辞められるかという問いに対しては、制限の向こう側で働いています。
貯蓄率が30%で、そのかなりの部分をiDeCoに回している人は、制限が外れるまで支えてくれる部分よりも、全体の数字のほうが速く増えていきます。NISAへの積立は反対に、自由に使える側に入ります。進み具合を見るときは、貯蓄のうちどれだけが本当に自由に使える側に入っているかを知っておくと役に立ちます。
3つ目の種類: 取り崩さない資産
自分で住んでいる家は、どちらの見方にも入りません。資産の中で最も大きな項目であることも多いのに、それで暮らせるお金ではありません。住むか、それで暮らすか、どちらか一方です。
この思い違いがいちばん多いのは、数字をいちばん良く見せるからです。9,000万円のマンションを足すと、8,150万円の資産は約1億7,000万円になり、FIRE目標額に届いたように見えます。売ることはできますが、そうすると別の住まいが要り、その家賃はもう年間支出に入っています。
人に貸している物件は別です。家賃収入があり、それが取り崩しの代わりになります。
Parendiの計算
ParendiはMac用の家計簿・資産管理アプリで、上の3つの種類がそのまま仕組みになっています。資産の項目にはそれぞれ種類があり、“自由に使える”、“引き出し制限あり”、“取り崩さない”のどれかです。前の2つから、“FIRE”ビューに並ぶ2つの見方、“自由に使える”と“引き出し制限ありを含む”ができます。1つの数字に2つの問いを背負わせることはしません。“取り崩さない”の項目は資産には含まれ、どちらの見方にも入りません。
Macの地域が日本なら、最初の起動時にNISA、iDeCo、企業型DCの項目が用意されます。NISAは“自由に使える”、iDeCoと企業型DCは“引き出し制限あり”です。ほかの地域で始めた場合は、“資産”ビューの“項目…”で自分で追加し、iDeCoと企業型DCの種類を“引き出し制限あり”に変えます。アプリ内の案内ではスイスのピラー3aと年金基金が例に出てきますが、iDeCoと同じ種類の資産です。
貯蓄率の点については、貯蓄のうち自由に使える側に入る割合をParendiが見積もります。自由に使える資産と引き出し制限のある資産の増え方の比から求めます。数字の元になるのは、読み込んだ明細と、月ごとに記録する資産の残高です。Parendiについて詳しく、または機能の詳細をご覧ください。
この記事は計算の考え方を解説するもので、年金や投資の助言ではありません。制限付きのお金をいつ受け取れるかは、加入先からの通知と制度の規則で確認してください。